納期

とても他人事には思えない。あるアニメ監督が苦境に立たされている。端的に言うなら納期に間に合わなかったのだ。「スケジュール管理もできない無能な監督」だの、「社会人として最低」だの、容赦ない罵声も一部にはある。ネットの書き込みなんて冷やかしも多いし、こういう場合、まずはプロデューサーが責任を負うという話もある。アニメ業界の内情なんて私は知らない。だが、個人的に、そんなことを口走る輩は現実社会を知らないか、あるいはよほど恵まれた人生を歩んでいるとしか思えない。そもそも非現実的な納期を承知の上で引き受けざるを得ない場合だってあるのだ。たとえどんなに用意周到に臨んでも予期しない事態は起こるものである。そんなときにどう対処するか、最善の道を導き出すのも監督の手腕だと思う。どんなに納期を守ろうとも期待されたクオリティを満たせなければ顧客は満足してはくれない。納期さえ守ればそれでいいというわけではないのだ。リソースが限られている以上、納期とクオリティは時としてトレードオフの関係となる。そのような事態に陥ってしまうこと自体は不名誉なことだが、それをどう乗り切るか、それこそ某監督の腕にかかっている。

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